save the piazza! ---- diary

2000/2/11 電光石火サイドシル

車検取得の目標は2000年の8月。こんなの楽勝楽勝、なんて思っていたら、あっという間に2000年になってしまっていた。これまで錆を見つけるだけ見つけはしたけど、錆取りしたのはバンパーだとかどうでもいいものばっかりで、ボデー本体の錆取りは遅々として進んでいないのだ。否、やってないわけじゃないんだけど小さい錆ばっかりで、大物は殆ど手つかずなのだ。Aピラーより前しかまともにやっていないんだから話にならない。これはマズイ。このままではホントにさらの2年後の2002年の8月にならないと車検が取れなくなってしまうではないか。これまでの錆取りで手作業の限界を痛切に感じていた俺は、遂にある決心をした。

もう我慢ならん、グラインダーでガーッとやってしまえ!

金も無けりゃ電源も無し、電動工具なんか今後一切縁が無いもんだと思っていたけど、ここまで切羽詰まってくると背に腹は代えられない。いい加減手作業じゃ無理だ。そう思いつつ別の用事でホームセンターに行ってみると、グラインダーは思いの外安いではないか。メーカー品でも安いものであれば6,000円くらい、無メーカーであれば3,000円ちょっとで売っているのだ。何だ、電動工具なんて15,000円くらいするもんだとばっかり思ってたけど、これくらいなら買えないことはない。そうなると問題なのは電源だ。駐車場には勿論コンセントなんて無いけど、ブロック塀の向こう側のマンションの壁にさりげなくコンセントが付いているのは既に確認済みだ。しかしこのコンセントに本当に電気が来ているのかどうかは定かではない。怪しまれるのを承知で、部屋からドライヤーを持ってきて繋いでみると、おお、動くぞ、ちゃんと電源来ているじゃないか。しかし勝手に使うわけにもイカンよなあ。しょうがねえ、大家の爺さんに聞いてみるか。


あのですねえ、ちょっとお願いしたいことがあるんですけど
あ゛〜、何だね?
あの、玄関のところの壁にコンセントありますよね? あれ使わせて欲しいんですけど。
ゑ? コンセント? あ〜あ〜、あったねそういえば。アンタ一体何に使うの?
いや、ちょっと車の修理するのに電動工具を使いたいもんで。
あ〜そう、いいですよ。夜中とかにやるんじゃないでしょ?
え〜え〜勿論、土日の昼間しか使いませんよ。
じゃあ結構ですよ。ところであの車一体どうすんの? エンジンかかんのかぃ?
.....
兎に角、電源の確保には成功した。となればあとはグラインダーさえ買ってくれば、そこには錆など全く無い素晴らしい世界が待っている、などと既に錆取りが終わったような気分になっている。買っただけで目標が達成できると勘違いする悪い癖がここでも顔を出す。そんなことだから色々と解説書の類いばかりが溜まるのだ。まあとにかく買わないことには素晴らしい世界も見えてこない。メーカー品は高いし、要は円盤が回ればいいんだからこんなの無メーカーでも大差無かろう。980円のセット工具にも、ストレートの工具にも特に不満を持っていない俺にメーカー品なんか不要だ。俺みたいな奴が居なけりゃ無メーカーは成り立たん、という妙な使命感の下、3000円のグラインダーを購入。ついでに真鍮ブラシとか研磨ディスクを買う。さらに電源の延長コードも買わなければならない。何だかんだで気付いたら6000円分くらい買っているではないか。あーあー、やっぱり金かかるねえ。

そして早速家に戻って試してみる。いきなりサイドシルにやるのは怖いので、フロントフェンダー内側のマッドガードの錆を取ってみることにする。延長コードをマンションの壁のコンセント差し込んで、グラインダーを箱から出して研磨ディスクを付ける。なんか下手すりゃ錆取りどころか切断しちまうような硬いディスクだけどホントにこれでいいのか? でもディスクの説明には錆取り云々って書いてあるもんなあ。まあやってみりゃ判るだろ。そして試しに電源を入れてみる。初めてなのでちょっと緊張。無メーカーらしいセコい作りのスイッチを入れると、グラインダーは凄まじい振動とともに回りだした。振動だけじゃなくて音もスゴイ。何でただ回しているだけなのにこんなに五月蝿いのだ。こりや近所迷惑も甚だしいぞ。こういう所に無メーカーの意気込みを感じる。五月蝿さで削れたような気分にさせる辺り、心憎いばかりの演出だ。しかし、うちの辺りは車もあまり通らないし、妙に静かなのが逆に災いする。そこに素晴らしいタイミングで米軍厚木基地の飛行機がやって来た。グラインダーどころではない騒音だ。俺はこの騒音のせいもあって飛行機は大嫌いなんだけど、たまにはいいことするじゃないか。好機到来とばかりに目の保護用にボロいサングラスをかけて、スイッチを入れる。相変わらず振動が凄い。そしてマッドガードに当てると、空転している時の5倍ぐらいの五月蝿さとともにガンガン火花が飛んでいく。そして削るときの振動も半端ではない。これは本当に削るという次元の話なんだろうか。数秒のうちに不安になり、一度スイッチを切る。米軍の飛行機はとっくに居なくなっていて、辺りはまた静けさを取り戻していた。俺だけが大迷惑の元凶である。そしてマッドガードを見る。確かに削れてはいるけど、削り過ぎだぞこりゃ。塗装と錆だけ取ってくれりゃあいいのに、このまんまじゃこの薄いマッドガードに穴が開くのは間違いなさそうだ。とりあえずこのディスクを使うのは止めておこう。

続いて真鍮ブラシを試すことにする。普通のワイヤーブラシじゃなくて真鍮ブラシなのは、単に真鍮ブラシがワイヤーブラシの半額ぐらいだったから、というだけの話だ。手作業では真鍮ブラシなんか役に立たないけど、何しろG200WN型エンジンの倍くらいの回転数を誇るグラインダーがやるのだから結果も当然違うだろう。そう期待しながらスイッチを入れる。そしてマッドガードに押し当てる。さっきと違って火花は飛ばない代わりに、削れていくスピードも遅い。騒音も若干ながら小さい。しかし作業時間が長くなるので、世間の迷惑という点では五十歩百歩だというのが腹立たしい。暫くやっているうちに、マッドガードの錆ポイントについては塗装剥がしと錆取りは大体終わる。部屋で剥離剤とワイヤーブラシを使ってひたすら手作業でやることを考えれば、その作業時間はまさに雲泥の差というやつだ。前に右側のマッドガードを手作業でやった時は結局1週間近くかかったもんなあ。それがたったの10分だぜ10分! まさに電光石火って感じ。電動工具を買うということは時間を買うことだ、と聞いたことがあるけど、これはホントだった。無メーカーでも全然問題無しだ。うむ、これは良いぞ。早速サイドシルにもやってみるか。

グラインダーを持って錆びたサイドシルに対峙する。ここの錆はかなり酷くて、下手すりゃ削るどころか完全切開が必要かもしれないという酷い事態だ。そもそも何も削ってないのにポツポツと穴があいているのだ。雨水は袋の中に入り放題だから、中は錆びていたって全然おかしくない。でも、そんなことをやったらモノコックが無くなってしまうので、そんなことは考えずに外から見える錆だけに集中しておく。下手に内側なんか考えないほうが良い。まあどうなるかは削ってみれば判るだろう。早速ブラシをグラインダーに取り付け、サングラスをかけて戦闘体制を整える。そして錆びた面に向かって腰を据える。セコいスイッチをいれて、唸りをあげるブラシを押し付ける。すると、錆びと一緒に塗装が剥がれ、辺りには白い粉が充満する。見るからに健康に悪そうなので、そんな空気を吸わないように息を止めて作業を続けるが、いつまでもそんな状態がキープできるわけもなく、結局その空気を吸ってしまう羽目になる。サングラスをかけていると一体どこまで削れたのか判らないので、たまにスイッチを止めて確認する。作業開始前にポツポツと開いていた穴は、グラインダーをかましたことによって明らかに大きくなっている。こうなると一気に切開してしまっても大差無いような気がしてくるけど、そこまでは勇気が出ない。そして、表面の錆が無くなったところで作業を止める。まあこんなもんでしょう。

続いて、前方にある錆びも同じように削る。どうしてこんなに離れた箇所が同じように錆びるのかどうにも解せないが、多分上から下に伸びている溝と関連しているのだろう。どっちにしても、今後の修理でこの溝は埋まってしまうはずなので、本当にこの溝のせいなのかを確認する術は無い。そして前側を終え、それに続いてほぼ全体にわたって錆びているサイドシル下端部も錆を取る。端のほうの直角部分はブラシが届かないので手作業に頼ることになるが、主に錆びているのはまさに下端というあたりだったので、あまり苦労はしない。直角部分そのものはあまり錆びていないのだ。でも、そんなことよりもっと問題なのは、その下端部の裏側はもっと錆びているということなんだけど、ここはジャッキアップして裏に潜らないと何も出来ないのでとりあえず無視だ。大体、こんな穴だらけのサイドシルを見ていると、とてもじゃないけど恐ろしくて潜り込む気にはなれない。ふう、もう疲れたぞ、これで右側の錆取りは良しとしよう。裏側は、今削った部分をちゃんと処理してからだ。しかしまあ、それにしてもグラインダー使うと作業が速いねえ。もう手作業なんかでやる気になれないよ。うるさくてゴメンな、隣のオバチャン。


さあ、あとは錆取り後の仕上げだ。例によってPOR15を患部に塗る。そこまでは良い。問題はその後どうやってポツポツ穴を塞ぐかなんだけど、ここはPOR15の上に直接ガラスクロスを乗せて、さらに上からPOR15を塗って固定してしまうことにする。エンジンルームの時は埋めるべき隙間が沢山あったのに比べて、今回は基本的に細かい穴の上から覆ってしまって補強するのが目的なので、この手で構わないという判断だ。そもそも、ポリエステル樹脂で埋めようとしたところで、こんな垂直の壁みたいなのが相手では、粘度の低いポリエステル樹脂はどんどん下に流れてしまうだけなので、こういう場所では少々難しいものがある。というわけで、ガラスクロスを適当な大きさに切って、さっき塗ったPOR15の上に被せ、更にその上からヘラで押し付ける。剥がれない程度にくっついたところで、さらに上からPOR15を塗る。塗るというより盛ると言った方が適当だろう。前側に続いて後ろ側も同様に始末してようやく完了だ。ふう、思ったより早く終わったぞ。まさかこれだけのものが1日で終わってしまうとは。

そして翌日、左側も同じようにグラインダーで錆取り、そしてPOR15&ガラスクロスで穴埋め完了。うーん、こんなに簡単に出来てしまってホントにいいんだろうか。今まで俺がやっていたブラシゴシゴシは一体何だったんだ。しかし、ガラスクロスのせいで他の面に比べてポコッと浮き出てしまった部分は一体どうすりゃいいんだろうか。まあいいか、どうせロッカーカバーで隠れるから見えやしないし。適当にパテで覆って、形を整えときゃいいだろ。そんなことを考えながら他に錆が無いかを見ていると、どうにも気になる茶色い筋を見つけてしまった。これが次なる悲劇への序章だったことは言うまでもない。

Next diary

save the piazza!