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2000/2/12 ジ・エンドレス・錆 (5)

錆取り中に別の錆を見つけてしまうことは至極当たり前、錆取りの野郎の宿命だ。ふと見たそこに不審な茶色の筋があったり、何とはなしに掴んだ部分がポロッと落ちてきたりすると、これまでやっていた錆取りなんかどうでも良くなってしまって、どうせ腹が立つだけなんだから止めときゃいいのに、ついついその新しい錆がどの程度のものかを追及したくなってしまうのだ。コイツもそうして発見してしまった。ま、どうせ錆びてるとは思っていたんだけど。

Aピラーの付け根からスーッと伸びる茶色い筋。そしてその茶色い筋は、明らかにウインドウの左端のモールディングと、ウェザーストリップのゴムが重なり合った部分から伸びている。どうにも気になって仕方がない。つい先日パテを盛ったサイドシルをペーパーがけしている間も、こっちが気になって擦るほうがどんどんおろそかになる。こうなるともうダメだ。そのウェザーストリップをひっぺがして、この錆がどの程度のものか確かめたくてしょうがない。思わずペーパーを放り出す。そして粉だらけの手でゴムを取り外しにかかる。先端部分は本当はモールディングを先に外すんだろうけど、これは外したことが無いし、メンドクサそうなので、強引にゴムだけ毟り取る。そしてピラーからルーフ方向にメリメリと剥がしていくと、そこには素晴らしい赤銅色に輝く世界が待っていた。

あーあ、やっぱり。あんまりにも予想通りなので別に驚きもしない。こんなので驚いている場合ではない。こういう時は、とりあえず屋根がくっついていて良かった良かったと安心するのが錆取り野郎としての心構えというものだ。しかしこの屋根は本当にくっついているのか? 雨どいの溝から掃除用の刷毛で粉になった錆を掃き出そうとすると、物凄い量の錆が雨どいを伝って落ちていく。クソッ、ホントは水が落ちるところを錆の粉が落ちていく瞬間を見ているのは腹立たしいという以外の何物でもない。その腹立たしさをグッとこらえて、ひたすら雨どいに錆を流していく。そうこうするうちに、この車の屋根周りの現実が顔を出す。

あーあ、こりゃダメだ、そのうちオープンカーになっちまうよ。

どういうくっつけ方をしているんだかなんて知ったこっちゃないけど、おそらくモノコックフレームと屋根の2枚(またはそれ以上)を接合していると思われるこの部分の鉄板は、上側に関しては既に殆ど無くなってしまっているようだ。この屋根はあと数年もすれば簡単に外れるようになるに違いない。ピアッツァにデタッチャブルトップ仕様車があったとは知らなかったぞ。しかも外したら二度と付けられないから困りモノだ。困っていてもしょうがないのでこの錆を擦りたい衝動に駆られるけど、肝心のウェザーストリップは、このままではBピラーまでしか外せない。それより先は、一度天井を外して、ウインドウの上のパネルを外さないと取れないのだ。しかし車の中はまるでゴミ溜めのような惨状であり、とてもじゃないけど今ここで天井を外せる状態じゃない。ダメだダメだダメだ、これ以上進めん、中断だ!

しかし、Bピラー以降はダメでも、Aピラーのモールディングはすぐに外せるぞ。このモールディングの裏もガンガンに錆びているに違いない。何しろちょっと刷毛で掃いてみただけでも凄い勢いで錆が落ちてくるのだ。錆びていない筈が無い。しかしだなあ、こんな部品なんか外したこと無いぞ。どうやって外すんだ? しばしあちこちから覗いて悩む。こんなのどうせ金具で嵌めてるだけに違いないんだけど、どっち方向に引っ張るのかイマイチ判らない。まあ内装とかと大して変わらないだろうから、単純に上に引っ張れば外れるだろ。しかし、下手に強引に引っ張って割れたりして、しかも部品が無かったりすると酷い目に遭うから、ここは極めて慎重にやらなければならない。実際に頼んだわけじゃないけど、部品が無くて酷い目に遭う確率は恐ろしく高いのだ。上側からジワジワと引っ張る。徐々に浮いてくるので、自分がやっていることが正しいと想像がつく。さらに力を入れると、いきなりスポッと抜けてきた。おぉ、やっぱりこの手か。しかし当然ながらこの1箇所では終わらない。次なる金具ポイントを探しつつ引っ張っていく。そしてもう1つ外す。さらに外す。そしておそらく最後の1個、というところまで来たところで、ものの見事にパリッ、と割ってしまった。あーあ、やっちまったい。順調に来ていたので油断していたようだ。ま〜しゃ〜ないでしょ〜。割れてしまった以上、既にコイツに拘る意味は無いので、極めて強引に引っ張って外す。強引にやればこんなのなんてことないのだ。そして出てきたのは恒例の黒と茶色のブレンド。

あーあーあ、これまた酷いな。このまま放っておいたらガラスがどっか行っちまうんじゃないのか? よくよく見てみると、ガラスを留めている接着剤を兼ねたゴムと雨どいの間の、非常に狭い隙間が錆びているので何ともタチが悪い。こんな所どうやって錆取りしろって言うんだ。POR15を流し込むのも無理っぽいほど狭い。大体だなあ、その接着剤をケチらずにもう少しぴっちり流しておけばだなあ、こんな所錆びたりしないんじゃないのか? あ〜もう、こういうどうしようもない錆を見ていると完全に気力が削がれる。割ってしまったモールディングを見ているうちにどんどん腹が立ってくる。それを収めるために一服する。ふぅ〜、どうしようかねえこの錆。まあいいや、左側も試しに見てみるとするかい。

左側と同じように、ウェザーストリップのゴムを外してみる。するとどうしたことか、こちらは思ったほど錆びていないじゃないか。オイオイどうしたんだ? これまで錆びていると思っている場所が全然錆びていなかったなんてことは一度も無かったぞ。こいつは珍しい。こんな珍事が発生すると、何だか逆に不吉な予感がするぞ。その不吉な予感が現実かどうかを確かめるべく、今度はウインドウのモールディングを外しにかかる。今度も割らないようにジワジワと浮き上がらせる。上から1つ、2つと順に外し、3つ目を外したところで、今度こそ割らないようにじっくりと動かす。しかし、これが妙に硬い。多少強引に振るように動かしているうちに何とか外れた。そして、モールディングを留めていた金具を抜き取る。上から3つは簡単に取れたが、一番下がどういうわけだか外れない。仕方がないのでドライバーを突っ込んで、抉るように外そうとしていると、パリン、という乾いた音とともに、何かが何処かへ飛んでいってしまった。

うわぁ、何てことだ、ガラスが欠けちまったじゃないか! あーもう、テコの原理とかいいながら強引に抉るんじゃなかった。しかし抉る以外にどうやって外せって言うんだこんなの。畜生、もう少し錆びない素材を使うとか、他に上手い付け方を考えやがれいすゞめ。自分が悪いってのは判っちゃいるけど、八つ当たりをせずにはいられない。その後暫く金具を外すべく色々やってみたけど結局ダメ。あ〜もうメンドクセエ、暗くなってきたし。今日はもう止めちまおう。

そして、割ってしまったモールディングの部品を頼みに行くと、例によって俺が頼んだものが最後の一個であった。あぶねえあぶねえ、残っていて良かった。しかし、問題の金具も相変わらずその隙間に残ったままである。こっちは残ってなくていいのに。

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