Part 3 Memorial Day? 何だそりゃ? (2001/05/28)


6時半にアラームが鳴って目が覚める。人並外れて朝が弱い俺にしては珍しくスッキリとした目覚めだ。この調子なら、時差ボケはかなり解消したに違いない。さっさと起き上がって珈琲を淹れてテレビをつける。子供向けのアニメ番組をやっているが、それでも意味が判らない。珈琲を飲みながらネットに繋いで、日本のスポーツ新聞系サイトを見たりする。やってることは日本と変わらないけど、電話代を気にしなくて済むだけこっちの方が気分が良い。スポーツ新聞系はどこもサッカーのコンフェデレーションズ杯の話題でもちきりだけど、米国に居る俺にはどうも現実味が無い。日本で起こっていることが全部他人事に見えてくる。そういやシンシナティに居た時もいっつもこんな感じだったなあ。暫くネットを彷徨った後、出発の支度を始める。ダラダラ準備している間にもう7時半になっている。しまった、のんびりし過ぎだ。

まとめた荷物を車のトランクに突っ込んで、歩いてフロントに行って会計を済ませ、隅っこの方で朝食を頂く。例によって過度に甘そうなドーナツ類がドッサリ置いてある。いやーやっぱりコレですよコレ。米国での朝食はこうでなくちゃイカン。甘いものが大好きな俺にはタマランのですよ。これで珈琲がアメリカンじゃなくてもっと濃いやつだったら言うことないのに。調子に乗って4つもドーナツを食っている間に、入り口のところには横にDisneyとか書かれたデカいバスが横付けされている。そしてそれに数名が乗込んでいく。うーん、何でこういう車でしか来れないような所からわざわざバスで行くんだろうか。この場所に自分の車以外の手段で来たとは到底思えないのに。何で自分の車で行かないんだ? まあいいや、俺が行くんじゃないし。ところで今日って月曜だよな。何でこんなに観光客が居るんだ? ますます判らん。

さて飯も食ったし、そんじゃそろそろ行きますか。Daytona Beachに行くには、前の道を走ってI-4に戻って、ただひたすら北東方面に突っ走るだけ。極めて簡単なのでわざわざ地図を見るまでもない。紛らわしい名前のHaward Johnson Innを後にして10分ほどでI-4に戻り、Universal Studioのあたりを過ぎると、右側にオーランドのダウンタウンが見え始める。周りが観光施設ばっかりなもんだから、観光客は全然行かないらしい。勿論俺も行くつもりは全然無い。ここまでクローズアップされないダウンタウンも珍しいんじゃないだろうか。なんてつまんないことを考えながら走っていると、ラジオのミスターアナウンサーはMemorial Day Weekend云々と言っている。何だそのMemorial Dayってのは。まさか祝日なんじゃないだろうな? このナントカデイウィークエンドってのは、前にシカゴに行った時のLabor Day Weekendに通じるものがあるからして、やっぱり祝日なのか? だとしたら、やたらとディズニーランドに行く人が多かったり、日曜の晩なのにモーテルの駐車場が満杯だったことに説明がつく。しかし俺には米国の常識なんか無いからそのへんはどうなんだか全然判らん。

さらに進んでいくうちに周囲は森と沼ばかりになってくる。ホントに何も無いところだなあ、とか思いながらダラダラと右側車線を走っているうちにいつの間にか3車線から2車線に減る地点となり、しかも右側車線はそのまま出口だったりして、そんな時に限って左側にコンボイが居たりするもんだから否応なしに一旦出口から降りてしまう羽目になったりする。そしてUターンして戻ろうとすると、I-4の入り口を示す緑看板に「Daytona Beach」なんて書いてあったりして、道を間違えたくせにちょっと嬉しかったりする。そしてそのDaytona Beachの表示も、近づいてくるにつれて「Daytona Bch」なんていう省略形になってしまう。こんな省略形は初めて見たぞ。Bチャンネルって何だ? なんて思ってしまったではないか。

途中のRest Areaで買ったDiet Pepsiを飲みつつ、OrlandoからI-4を50分ほど走ったところで目指す出口がやってくる。降りてからもひたすら真っ直ぐ走るだけだ。徐々に車が増えてきて、いい加減ビーチも近づいてきたかな、と思いつつ交差点で信号待ちをしながら辺りを見回してみると、よくよく看板を見てみたらそこで交差している道はA1Aじゃないか。A1Aってのはビーチ沿いに延々走っている道であり、これと交差するってことはもう着いたに等しい。なんだなんだ、もうホントにすぐそばまで来ていたんじゃないか。そして信号が変わり、前の車についてそのまま真っ直ぐ走ってみると、そこはもうビーチドライブの料金所だった。ありゃりゃ、適当な所に停めて様子見するつもりだったのに、これじゃこのままビーチに入っちまうじゃないか。まあいいか、どうせいつかは入るんだし。このDaytona Beachは、いわゆる砂浜でありながらもかなり締まった砂のようで、そのおかげで普通に車でビーチを走れるみたいで、そしてそこを走るためには$5払う必要があるらしい。料金所で$5札を出して駐車証みたいなものを貰う。そしてその先はもうビーチ!


遂に来たぜ大西洋!

いやー、いいねえいいねえいいねえここは! 何がどういいんだか判んないけどとにかくいいんだ! 我が人生で初めて見る大西洋、そして最初で最後かもしれない大西洋に感動しつつ、時速10マイルでビーチをゆっくり走る。いくらビーチを車で走れると言ってもテキトーに走ることが許されているわけではなく、一応車道みたいなのがあって、その陸側が駐車地帯となっているようだ。車道と言っても特に整備されているわけではなくて、ところどころに旗が立っているだけなんだけど。いつまでも走っていてもしょうがないので車を停めようと思ったのに、妙に車が多くてなかなか空いている場所が無い。うーん、やっぱりMemorial Dayってのは祝日なのか? そうに違いないぞこの車の多さは。いくら何でも平日の昼間にこんなに家族連れが多いはずが無い。ゆっくり進んでいくうちに徐々に空きが多くなる。適当なところで車を停める。そしてドアを開けると...暑いなあやっぱり。

そして念願のビーチに降り立つ。おぉ! 何だこの砂は、全然ベトベトしないぞ。しかもホントホントにに真っ白だ。黒や茶色の粒々が全然混じってない。何だか小麦粉の上に立ってるみたいだ。その異質な感覚を楽しみながらビーチを歩く。歩いているうちに、砂でスタックしている車に何台か出くわす。デカいトラックがタイヤを空回りさせて砂を吹っ飛ばしまくっていたりする。駐車エリアの砂はそれほど締まっていないので、調子に乗って奥の方まで行ってしまうとああなるみたいだ。日本でもたまに見かけるアホみたいに車高を上げたアコードなんかがこういう所を走っていると、何だか少しはマシに見えてくるから不思議なもんだ。ビーチにいるのはやっぱり家族連れが多くて、海に入っているのは概ねオッサンとガキだ。御婦人は大抵ビーチで寝ている。波ははっきり言って小さいけど、子供が数名ブギーボードをやっていたりする。当然ながら全然乗れてない。あれじゃ浮輪と同じだ。


一応サーフボードやブギボーのレンタルはしてるんだけど...


波がこれじゃあねえ。セットが来てやっと腿〜腰って感じ。しかも波が立つところは人だらけ。


やいライフガード、いちゃついてねえで仕事しろ!

さあどうしますかねえ。折角ここまで来たんだから泳がない手は無いよな。たまーにセットが入るといい感じの波になるから、あれならボディサーフィンなら出来るかもしれないし。早速車のところに戻って海パンに着替える。とても出張で来たとは思えない準備の良さだ。ついでにゴーグルも持ってきてあったけど、多分これは必要無いだろう。車の鍵をいつものようにバンパーの裏側に隠して準備完了。さあ入りますかね。

一応俺も波乗り歴は長い(だからって上手いとは限らない)ので、どの波なら乗れるかなんてことは波を見りゃ大抵判る。ビーチを歩きながら、おいおいオッサン、そんな波は幾ら頑張ったところで100年経っても乗れねえぞ、なんて馬鹿にしながら波を物色する。そこそこいい具合に割れる場所を見つけて海に入る。思ったより冷たいけどすぐに慣れる。この近辺では一番まともそうに見えるのに誰も居ないのは何故だろうか、とか思いつつ波を待つ。悪くない波が来たので泳ぎだす。少々沖に寄りすぎていたようで見事に逃してしまう。その場所で次のセットを待っているうちに周りに少しずつ人が増えている。何となく誰かが居るところに行ってしまうのは日本人も米国人も変わらないようだ。そしてセットが来る。周りのオッサンや子供も一斉に泳ぎだす。そして見事に波に乗る。やったぜ! 遂にDaytonaのローカルと一緒に(ボディ)サーフィンをしたぜ! これで俺も米国本土の西と東で(ボディ)サーフィンをしたってことだな。いやーたまらんなこりゃ。何度も何度も調子に乗ってやっているうちに、インサイドで波待ちをしていた子供にぶつかりそうになってしまう。申し訳なさそうに謝ってきたので、Never mind. なんて適当な逃げをうって、ホントに逃げるように沖に出る。通じていたのかどうかも、Never mind.がこの場に適当だったかも判らないんだからしょうがない。ところでこっちではボディサーフィンはかなり一般的なんだろうか。オッサンもガキもネエチャンも一緒になってみんなやっている。たまたまそばにいたオッサンと同じ波に乗って、岸の方で立ち上がったところで Hey, good job! なんて言いながら親指立てあったりする。なんだかむちゃくちゃ楽しい。そうそう、これが波乗りだよ。これが原点なんだよ。今、関東近辺の何処で波乗りやったって、こんな楽しさって無いもんな。10年前は鵠沼でさえもこんな感じだったのに。

かなり満足して海から上がる。車のところに戻って一服していると、かなり車の台数が増えてきたことに気付く。車を停める場所がなくて困っている車が多い。時間はそろそろ12時だ。いい感じに疲れているので、そのままビーチで昼寝しようかとも思ったけど、まだまだやることがあるので断腸の思いでビーチを去ることにする。それにしてもこの砂はすごい。濡れた状態で着替えをすると大抵砂がベトベトするんだけど、全然そんなことは無い。手で払えばすぐに落ちるし、別にそんなことしなくても勝手に落ちていく。足の裏にも全然つかない。着替えを終えて、運転席に座って地図を見つつ、さあこれからどうしようか、なんて考えていると前方からクラクションが鳴る。その車のニイチャンは「もう帰るの?」って感じのジェスチャーをしているので、しょうがないので出てやることにして、それっぽいジェスチャーを返しつつエンジンをかけて車を出す。

さて、これからどうしようかねえ。朝食にドーナツを4つ食ったおかげで別に腹も減っていないので、そのままDaytona International Speedway(あの有名なDAYTONA 500レースが行われるサーキット)でも見学に行こうかと思ったけど、何を思ったかビーチ沿いを走るA1Aを北上してしまった。まあいいか、有名な道みたいだから、これを全線制覇してみるのも悪くない。すっかり温くなったDiet Pepsiを飲みつつ、昨日買ったスターバックスの珈琲の瓶を灰皿代わりに一服しながらノンビリ走る。暫くの間は道の両側は土産屋とホテルばっかりだったのに、いつの間にやら右側はすぐに海、左は別荘地みたいな住宅地になる。気付いてみると、もはやこの道はA1Aとは言わず別の名前になっているようだ。確かにこのあたりの雰囲気は、さっきまで居たあたりとはまるで違う。たまたま駐車場みたいなのがあったので、そこに車を停めて海を眺める。そこでは何人か釣りをしているくらいで、誰も泳いでいる人なんかいない。気のせいか砂もさっきのビーチほどきれいではない。そのビーチではデブのオバチャンが折り畳み椅子に座って本を読んでいる。こういうのんびりとした雰囲気も悪くないが、あいにく俺にはのんびりしているほどの時間が無い。これ以上北に行ってもしょうがないのは見え見えなので、今来た道を戻ることにする。

その途中で、昨日買い損ねたPalm m505のことを思い出す。そろそろ買っておかないと結局買い損ねたまま帰国なんてことになりかねないので、ある程度戻ってきたところで適当に大きい通りに入ってみる。米国のその手の店は大概にして大きい通り沿いに固まって存在しているので、暫く走っていれば何かしらの店はある。特に大きい道同士の交差点が狙い目だ。案の定OFFICE DEPOTが現れたので寄ってみる。PDAコーナーに行くときちんとm505は置いてある。もう買うのは決めているくせに手に取っていじくってみる。あれこれボタンを押したり画面をつついたりしていると、隣にいたオバサン(珍しくデブではなかった)が話しかけてくる。「それはMP3プレーヤーは付いているのか?」なんて言っている。ついてないぞ、と言うと、こっちは付いているんだけど高いんだよねえ、なんて感じで手に持っているCOMPAQのiPaqにケチをつけている。こんなガジェットとはまるで無縁そうな人なのに、いきなりMP3がどうのこうのと言うからこっちも戸惑ってしまう。SONYの新しいやつは知ってるか?あれならMP3プレーヤーが付いてるぞ、なんて言ってみると、案の定SONY製品は知らないらしいけど、残念ながらここには置いていないので説明のしようもない。結局オバサンは諦めたようでその場を去り、俺はm505とGame Pakのカード(米国のこの手の店は、現物ではなく購入カードみたいなものをレジに持っていくシステムが多い)を持ってレジに向かう。レジのオバサン(今度はデブ)にカードを渡すと、それを持って倉庫に行ってしまった。全然戻ってこないのでそばのワゴンを見てみると、US GEOGRAPHYとかいう10枚組の教育用CD-ROMがあって、それが$19で投げ売りされている。こりゃお買い得だ、と思うやいなや、それもレジに置いてしまう。どうも俺は10枚組とかお買い得とかいう言葉にからっきし弱いのだ。するとさっきのオバサンが戻ってきて、俺が頼んだm505とGame Pakの他に、m505用のSLIM LEATHER CASEも一緒に持ってきて「これもどう?」なんて言っている。3秒ほど悩んで買うことにする。そして合計幾らかと思ったら、税込みで$550になってしまった。あーあ。来月のカード請求書が恐い。


コレは一応予定通りだったんだけど...


あーあ、また荷物増やしちまった。

デカイ袋を持ってOFFICE DEPOTを出て、その袋をトランクに放り込む。とりあえず動作確認くらいはしてみたかったけど、コレは何しろ充電式だから今はどうしようもない。そもそもそんな暇もない。動作確認は今日の宿でやることにして、そろそろDaytona International Speedwayに行くか、と思いつつ駐車場を出たものの、まさにこの道というところを曲がりそこねて真っ直ぐ行ってしまった。しかもその先にAuto Zoneという自動車用品店があったので、またしても寄ってしまう。店に入ってみると何故か店内は黒人ばっかりでちょっと恐い。しかし折角寄ったので、JB WELDっていう接着剤と、パイプの穴塞ぎ用耐熱パテみたいなものを買う。さて、今度こそサーキットに行くぞ。

今度はきちんと交差点を曲がり、このへんでは一番大きいショッピングモールの横を抜けて真っ直ぐ進むと、遂に左側にDaytona International Speedwayが現れる。オーバルコースなだけに、観客席だけ見てると何だか巨大な陸上競技場みたいだ。こちら側の車線からは直接入れないので、少し先に行ったところでUターンしてから駐車場に入る。


何となく米国のサーキットって感じ。

ここはバスツアーみたいなものがあって、それに乗ると実際にサーキット内を走れたりするらしい。俺は別にCARTとか車のレースに物凄く興味があるわけでもないけど、まあまあ好きなほうではあるので、やっぱり折角来たからにはそのバスツアーとやらに行ってみたいぞ。とりあえず建物の中に入ってみると、ミュージアムのようなものがあって、そのそばはどういうわけかDaytona Beach Cityのビジターセンターになっている。宿のクーポンでも探すか、と思って色々物色していると、カウンターに居るオッチャンが話しかけてきて、何処から来たんだ? なんて聞いてくる。日本からだって言うとちょっとだけ驚いている。そして観光案内のパンフレットみたいなものを持ち出して地図を見せながら、ここのビーチは車で走れるから是非行け、みたいなことを言っている。さっき行ってきたばっかりなんだけど、まあとりあえず相づちをうっておく。じゃあこの本あげるから、ここに名前書いてね、みたいな感じで台帳を出す。米国のビジターセンターはこういうシステムが多い。そしてそこに居る人達は大抵の場合ものすごく親切でフレンドリーだ。単に台帳に書くだけなのに、ここには名前を書いて、こっちにはJapanって書くんだ、なんて感じ。お礼を言ってそこを後にして、すぐそばにある土産物屋に入る。いかにも米国らしく派手派手なTシャツだの帽子だのが色々売っている。往年の名ドライバーみたいな名前が沢山あるけど、残念ながら俺は米国内のレースはよく知らないので誰が誰だか全然判らない。例によってTシャツを買って、ついでに土産用にボールペンを何本か買う。さて、そろそろバスツアーに行くとしよう。


このオネエサン達は何故に組み立て体操をしているのだろうか。

早速チケット売り場に行ってみる。ミュージアムとバスツアーのCombo Ticketで$16だそうだ。バスツアーだけなら$6なんだけど、例によって折角来たんだから精神が働いてCombo Ticketを買う。バスツアーは30分に一度発車するようで、丁度さっき行ったばかりなので暫くミュージアムを見て時間を潰していればいい。ミュージアムに入ろうとすると、入り口のところで係員のオバサンが声をかけてきて、映画を見る場合はあの500っていう看板のところ、バスツアーに行く前には退場する時に手にスタンプを捺してもらうのを忘れないように、なんて感じであれやこれや教えてくれる。こんな所でも親切だ。中に入ってちょっとうろついたところで丁度映画の時間になったようで、人がゾロゾロとそちらの方に向かっていく。勿論俺も入る。


ミュージアムの中はこんなのが沢山

200人くらい入れそうな館内は大体1/3くらい埋まり、案内のオッサンが出てきて一喋りした後に映画が始まる。ここの歴史や沿革だとか、サーキットの車載映像とか、過去の名レース映像とか、DAYTONA 500開催時の盛り上がりの凄さとか、そういったものが約15分にまとめられている。テレビで観たら大した事無い映像でも、これだけの大画面と大音響だと迫力が違う。英語は完全には判らないけど、映像と音響だけでも充分面白い。

映画が終わって外に出ると、次のバスツアー出発まであと10分というところだった。ホントに米国のこういう施設は時間のプログラミングが上手い。映画を見た連中はこぞってバスツアー入口に向かっていく。並び始めて5分も待たずに、サファリパークなんかにありそうなオープンバス? がやってくる。トレーラー構造になっていて、3台の客車? が連結されている。席はベンチ状態で、1列には4名座れて、それが一両に10列くらいある。まあとにかく文章では書きにくい構造だ。係員がやってきて、何人のグループだ? なんて聞きながら、グループはグループで固めて、二人組とか独り者もそれはそれで上手い具合に席に当てはめていく。こういう心配りも米国ならではだ。何だかんだで席は殆ど埋まってしまった。やはりMemorial Dayというのは祝日であることは間違いあるまい。全員座り終わったところで運チャンが乗込み、もう何度も喋って頭にこびりついているであろうアナウンスを始めると、前方の門が開く。さて出発だ。

運チャンはこれから30分のツアーだとか何とかあれこれアナウンスしつつ、この難しい構造のバスを巧みに操ってゆっくり進んでいく。ちょっと大きめの乗用車なら入りたくないような狭いトンネルを軽々とくぐりぬけてサーキットの中に入る。内側からサーキットを眺めると、深いバンクのオーバルコースに囲まれて、谷底に居るような変な気分。ちょっと走って、正面左側のカーブのところで突然運チャンが車を停める。一台テスト走行しているから、ちょっとそれを眺めてみよう、ってことらしい。みんなカメラを手に持って降りていく。そして車が通り抜けるたびにほぼ全員カメラを構える。しかしそれなりのスピードで走っているので捉えるのが難しい。


近場で見るとすげー迫力。

3周ほど眺めた後で、運チャンの「さあ、そろそろ行こうか」の声で再びバスに乗る。相変わらず運チャンは喋り続け、あっちのスタンドはどうたらこうたら、このへんはRace Weekにはキャンパーが来てどうたらこうたら、なんて言っている。それを聞いている間にバスはピットに入り、ピットレーンのところで再び停まる。15分にここを出るからそれまで御自由に、ってことらしい。


とにかくスケールがデカイ。


車が1台停まっているところに、


もう1台入ってきた。


2台並んでいるところでサインをねだる客が出現。

そしてこれが終わるとあとはバスは戻るだけだ。出発したところに戻ってバスツアー終了。まあこんなもんでしょうって感じ。さて、これからどうしようかねえ。時間は4時半なので、米国はサマータイムがあることを考えればまだどこかに行けるんだけど、ビーチとサーキット以外の名所は残念ながら知らないのだ。しょうがないのでさっき貰ったパンフレットを眺めていると、PONCE DE LEONという灯台はなかなか景色が良くて、それなりの名所らしい。おぉ、PONCEですよPONCE。あの横浜大洋ホエールズのポンセと同性じゃありませんか。そしてその灯台はビーチからA1Aをひたすら南下した所にあるらしい。A1A全線制覇も達成出来ることだし、何といってもPONCEだし、こりゃ行くしかないでしょう。

ここまで来た道を戻って、A1Aとの交差点を右折して南下する。相変わらず道の両側はホテルと土産物屋ばっかりだ。貰ったパンフレットにはあまり安い宿は載っていなかった、っていうかホテルしか載っていなかったので、A1Aを走りながら今夜の宿を物色する。しかし安いところはホントにボロいし、それなりに良さそうなところはやっぱり高い。Ocean Frontとか、Ocean Viewとかいう付加価値がつくとそれはそれで高いみたいだ。Ocean FrontとOcean Viewの違いは何なのだろうか。目の前が全部海か、それとも単に海が見えるだけかの違いか? とか何とか色々と考えながら単調な道を淡々と走っているうちに道は1車線になり、そのまま真っ直ぐ進むと公園の入り口のような所に出てしまう。そこを前の車が右折していったので、何となくそれについていく。そしてちょっと走るとそこが灯台だった。


なかなか洒落た灯台じゃありませんか。

ここまで来たら上に登って眺めてみたいぞ。早速受付らしき建物に向かう。中は土産物屋のようになっていて、何となくそれを眺めていると、ほかの客が係員に何か聞いている。それを立ち聞きしていると、何と今はメンテナンス中だから灯台は登れないなんて言うではないか。何だと? と思ってそっちの方を見てみると、確かに壁にはそんなことを書いた紙が張ってある。あーあ、一体何しにここに来たんだか。登れないんじゃ意味が無いじゃないか。


よく見りゃ入口の所にも書いてありやんの。

登れないものはしょうがない。もう5時半だし、じゃあ帰るか、と言いたいところだけど困ったことに帰るところなんかありゃしない。これから帰るところを探さなけりゃイカンのだ。うーん、どうしようかなあ。折角だからビーチが見える部屋がいいけど、あんまり高いのも困る。とりあえずモーテルと名乗っている所で、Ocean Viewと書いてある所を探してみるか。こんなことを考えながら運転しているうちに、A1Aはホテル地帯に入る。大抵のモーテルはどうやらビーチが見える可能性は低そうで、仮に見える部屋であっても今からでは手遅れに違いない。逆にちゃんとしたホテルはいかにもOcean Frontって感じだけど、いかにも高そうなので却下。色々考えているうちに最初に行ったビーチとの交差点まで来てしまったので、またしても南に戻る。かなり南下したところで、SUPER 8というモーテルが構造的にビーチが見えそうな感じだったので、とりあえず車を停めてみる。まあ一応どの部屋からも見えることは見えるとは思うけど、それはあくまで海がちょっと見えるだけであって、目の前に海が広がるとかそんなカッコいいもんじゃない。バルコニーで酒飲んでいる人が居たりするくらいだから、見えることは見えるんだろう。ところでSUPER 8ってシカゴでも泊まったじゃないか。別のところにしようかなあ、とも思ったけど、まあ何も見えないよりはマシだし、もう探すのも面倒なのでここに決定。


まあOCEAN VIEWだからいいでしょう。面白味は無いけど。

フロントらしき所に行ってみると、東南アジア系のガキが一人居るだけで他に誰も居ない。オイオイ、何だここは、と思ったら奥の方からやはり東南アジア系のオッサンが出てくる。部屋があるか聞いてみると、なんだかメンドクサそうにHow many? なんて聞いてくる。一人だと言うと、どうやら部屋はあったようだ。カードを出したりサインを書いたりしているうちに、俺のサインを見たそのオッサンはどうやら漢字に興味を持ったようで、どっから来たんだ? なんて言う。日本からだって言うと、そうか、俺はシンガポールから来たんだ、日本に行こうかと思ったけど、日本の仕事は忙しそうだったからそれはやめて米国に来た、なんて言っている。そりゃアンタが正しい、俺だって日本に行くくらいなら米国に行くぞ、なんて話をしていると、突然そのオッサンは自分の名前を漢字で書いてくれ、なんて言い出して、紙とペンを出してくる。仲間に自慢したいらしい。名前を聞くと、Andyなんだそうだ。そんな漢字あるわけないので、日本人にはAndyっていう名前は無いから無理だと言うと、じゃあ似ている名前でいい、なんて感じで妙にしつこいので、しょうがないので「安藤」と書いて、さらにその下に「Ando」と読み方を書いておいて、それで満足させようとする。しかしAndyにはこの字は難しすぎたようで、ペンで似たように書こうとしても全然書けない。結局諦めてしまった。やっぱり日本じゃなくて米国に来ておいて良かったなあ、なんて冗談を言ってやったりして、217号室のカードキーを貰う。さーて、それじゃ部屋に行くか。

トランクから荷物を出して階段を上がる。荷物が増えているのでメンドクサイ。そして部屋の前についてみると、何故か217号室のドアが全開状態だ。何だこりゃ、と思って入ってみると、どうもルームキーパーは掃除を途中で放り出してそのままどっかに行ってしまったみたいで、ベッドの上に布団が丸められて放置されている。何とも田舎のモーテルらしい。とりあえず部屋に入って、バルコニーへの扉を開けて外に出てみると、まあ一応ビーチは見えることは見える。よっしゃ、今日はそのへんでファーストフードでも買って来て、ここで飯でも食うことにしよう。買い物やってる間に掃除も終わるだろうし。


部屋から見た眺めはセコイ。バルコニーに出ればこれよりだいぶマシ。

早速車に乗ってA1Aを北上する。しかし困ったことにマクドナルドやバーガーキングは沢山あるのに、それ以外にはあまりファーストフードっぽい所は無い。ピザ屋はあるけど、あまりピザは食いたくないしなあ。レストランは沢山あるけど、そんなのに入る気は毛頭無いので素通り。一人で行っても後悔するだけだ。ケンタッキーとかTaco Bellくらいあるだろうと思ったのに、無い。ちょっと大きめのスーパーがあったので試しに寄ってみても、そこにはDELIのコーナーが無い。うーん困った。まあとりあえずビールだけ買っとくか、と思いつつセブンイレブンに寄ってみると、ハンバーガーとかサンドイッチの類があったので、もう探すのが面倒故にここで買うことにしてしまう。ビールとレモンティー、そしてチーズバーガーと、オススメらしいのでチキンバーベキューサンドイッチ(サンドイッチとは言っても、日本で言うフランスパンみたいなパンを使ったデカイやつ)を買う。ついでにつまみ用にM&Mチョコレートも買う。部屋に電子レンジがあったかどうか記憶に無いので、Microwaveを借りてバーガー類を温めてから宿に持ち帰る。

部屋に戻ってみると、どうやら掃除は終わったようでベッドもきちんと準備されている。よくよく考えてみれば海から上がってから一度もシャワーを浴びていなかったので、飲み物類を冷蔵庫に突っ込んで、とりあえずシャワーに入る。困ったことにシャンプーが無いので持参したものを使う。あんまり気にしていなかったけど、やっぱり体中がベトベトしていたみたいで、出てきたらかなりスッキリ。そしてようやく飯の時間。バーガー類とビールを持ってバルコニーに出る。

そもそもここは東海岸だけに夕陽が見えるわけでも何でもないし、海の目の前っていうわけでもないけど、風が爽やかで気温的にも丁度いい感じなので、ここで食う晩飯も悪くはない。しかし、使い慣れないMicrowaveの操作を間違えたせいで温めきれていないバーガー類は微妙な味だ。そしてオススメの筈のチキンバーベキューサンドイッチは、米国らしい大雑把な味で、これもちょっとなあ。それらを全てビールと煙草で誤魔化す。暫くバルコニーでボーッとしている間に、下の駐車場では二組の家族がお別れしている。多分一組は帰って、もう一組はもう1泊するんだろう。ただボーッとしているのも飽きたので、部屋に入って荷物の整理でもしよう。

余計なものを沢山買ってしまったので、既にこの時点で鞄は満杯状態だ。あーあ、こりゃ間違いなく鞄を買わざるを得まい。そしてさっき買ってきたPalm m505の箱を開ける。コイツは充電が必要なので、さっさとクレードルとアダプターを繋げて充電を始める。暫く放っておかないと動作確認も出来ないのでこれはそのまま放っておいて、今度はPowerBookを出してネットに繋ぐことにする。しかし、ここでもまた全然電話をかけてくれない。またAOLの設定か? と思って確認してみても今度は何処もおかしくない。これはこのモーテルの交換器の設定に違いないと確信して、試しに貰ったパンフレットに書いてあるこのへんのレストランにかけてみると、全く反応が無い。やっぱりこれだ。前にIndianaのホテルで困りまくった時と同じだ。米国のホテルなんて数えるほどしか泊まったことないのに、何でこうしょっちゅうこういう事態になるんだか。しょうがないのでフロントに電話をかけてAndyを呼び出して文句を言う。直したぞ、OKだ、と言うので、もう一度トライする。それでもやっぱり繋がりゃしない。ヤケクソでもう一度そのへんのレストランにかけてみると、最初に100をダイヤルしてどうのこうの、といった案内が流れる。何だそれは、そんなことは何処にも書いてないぞ。しかし繋がらないことには始まらないので試しに100をつけてみてもやっぱりダメ。もうメンドクサくなったので諦める。クソッ、Memorial Dayが祝日かどうか確認したかったのに。別にメールくらい見れなくても困りゃしないんだけど、明日行く予定のKennedy Space Centerがオープンしているかどうかを調べられなかったのは問題だ。まあ多分開いてるだろ。

ネットに繋がらないので、貰ったパンフレットだの何だのを眺めて、明日の予定を考えたりしながらビールを飲む。とりあえず明日まず最初にやることは、Daytona Beachの日の出を見ることだ。大西洋から昇る太陽なんて、もう一生見られないかもしれないんだからそれを見ない手はない。朝は弱いとか何とか言っている場合じゃない。意地でも起きるのだ。しかし問題は日の出が何時なんだかさっぱり判らないってことで、それはネットに繋げられればある程度は判るのに、困ったことに繋がらないんだから話にならない。しょうがないのでとりあえず朝4時半に起きることにして、目覚ましをセットする。そんなことをしている間にもm505はある程度充電された筈なので、試しに動かしてみる。何の問題もなく動く。うむ、とりあえず一安心だ。しかし、これは英語版故にそのままでは俺のPowerBookとはHotSyncできないだろうから、このままじゃ何の役にも立たん。まあいいや、このまま設定にハマって夜更かしした挙げ句寝坊したらどうしようもない。今日のところはさっさと寝ることにしよう。何だかんだでそれなりに日焼けしていたようで、背中に若干のヒリヒリ感を感じつつ、いつもながらグニャグニャな布団で眠りについたのでありました。



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