K1100RSに戻ってきたわけ


バイクが無かった2年間は、別に苦痛というほどのことはなかったが、
やっぱりじわじわとバイクが欲しくなってしまった。

そのじわじわ感に点火してしまったのは、
何となく寄ってしまった茅ヶ崎のU-MEDIAで見た、Buell サイクロンM2。
TWだのFTRだのといった軽薄そうなバイクが流行っていた時代に、
この無骨な鉄の塊は魅力に溢れていた。

しかし、残念ながらこいつは高いのだ。
金がないなら貯めればいいが、俺はさっさと乗りたいのだ。

結果的に、予算重視でTDM850を買った。オークションで140,000円。

TDMでは、10年来の夢だった北海道に行き、その翌年には九州にも行った。

TDMは、旅のお供としては実によくできたバイクだ。
乗って良し、走って良し。
高速から峠、さらには渋滞した国道まで、
何処を走っても充分に速い。
乗車姿勢も楽なので、どれだけ乗っても全然疲れない。
スリムなおかげで足つきもそれほど悪くないし、取り回しもまあまあ軽い。

ただ、オートバイという極めて趣味的なモノにおいて、
最も必要な何かが決定的に足りない。

持っていて全然満足感が無いのだ。
こういうのは理屈じゃない。感性の問題だ。

伊豆だとか信州だとか、そのへんを一泊程度で走っているかぎりは、
そんなことは別に考えもしなかった。
それを、日本の両端を走っているうちに感じるようになった。

そんな思いを漠然と持ったまま向かった九州ツーリング。
大隅半島の南端・根占から山川に向かうフェリー乗り場で、
ガンメタのK100RS 4Vに遭遇した。

ここ数年、TDMであちこち走っていたのに、
K100RSを見かけることは殆ど無かった。
いつのまにかレッドリスト入りしてしまったらしい。
それが、TDMに何となく不満を持ち始めた頃に、Kに遭遇した。

何となく、自分がKに乗らなきゃいけないような気がしてしまった。
俺には絶滅危惧種を救う義務がある。何故かその時は思ってしまった。
TDMから乗り換えるだけなら、選択肢は他にもいくらでもあるというのに。

予算の関係もあった。
手持ち資金は、チマチマ貯めてきた25万。
これじゃBuellは買えない。でもKなら買える(ものもある)。

探したのは、K100RS 4VのAnniversary。
パールホワイトにMラインが入っているやつ。
結果的に買うことになるK1100RSなんていうものは、
最初は眼中に無かった。高そうだから。
中古車店で買うつもりも毛頭無かった。高いから。
バイクなんて個人売買で充分だ。

そうして何となくオークションを漁ること数週間。
迷った挙げ句入札したK100RS 4VのAnniversary(ちょっと距離がいっていた)を、
価格高騰によって断念したりするうちに、
大都市近辺以外からの出品物は値が上がらない傾向にあることに気付く。

そこに出てきたのが、盛岡発のK1100RS。
車検は切れているけど、走行距離は18,500kmと極めて少ない。
パニアケースにトップケースもついて180,000円。こりゃ安い。

白なのにMラインが無いのは怪しいけど、
まあそんなものは欲しけりゃ貼ればいい。

結果的に「大都市近辺以外のものは値が上がらない」の法則にしたがい、
285,000円で落札した。
うちの屋上でバーベキューをしている最中の出来事だった。

はるばる盛岡からうちにKがやってきたのは、
それから約3週間後のことであった。

早速近くのバイク屋に車検を頼んだ。
前回は、動かなくなってしまったKを、買取屋のトラックに乗せた。
今度は、動くけどナンバーが無いKを、バイク屋の軽トラに乗せた。

さらに1週間後。
ナンバーがついて戻ってきたK1100RSのフィーリングは、
やっぱりKのものだった。
TDMより、明らかに乗りづらくて、肩と背中が疲れる。
しかし、満足感は何故か大きく上回る。

普通なら「今度は手放さないぞ」とか誓ったりしそうなもんだけど、
とりあえずそんな堅苦しいことは考えないことにしておく。

気付いたら100,000kmだった。そのぐらいの心の持ち方が丁度良い。


しかし、10年経つと、発想が守りに入るな。