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1999/12/* ジ・エンドレス・錆 (4)

ダッシュボードだの何だのと、余計なことばっかりやっていて肝心なことをサボってしまっていた。折角買ったラストバスターが、買ってから数ヶ月が経ったというのに、相も変わらず棚の上で箱に入って寝そべったままなのだ。こんなのホントに効果があるんだか無いんだか判らんけど、取り付けてみないとホントに何も判らないではないか。大体だなあ、折角2万円も払って買ったっていうのに、数ヶ月も放っておくってのはテメエ何様のつもりだ、さっさと付けやがれ馬鹿野郎、とJR130に怒られているような気がしてきたので、重い腰を上げて取り付け準備にとりかかることにした。

取り付けるのはエンジンルームなので、とりあえず掃除をしないことには何も始まらない。随分前にパワステオイルが飛び散ったJR120を掃除するときに買ったKUREのエンジンクリーナーを持ちだして、ボンネットを開けてしばし眺める。ん〜、まずは邪魔な部品を外さなきゃダメだなこりゃ。ラストバスターそのものはそんなに大きくないので、別にエンジンルーム全体を掃除する必要なんか全然無いんだけど、どうせやるなら徹底的にやりたいではないか。何となく右側から始める。バッテリーをどけて、ヒューズボックスやらコイルやらをどんどん外す。そしてエンジンクリーナーをブワーッと吹きつけて暫く待って、その後ペーパータオルでふき取る。おぉ、中々キレイになるではないか。しかしやっぱり小さい錆があるねえ。まあいいや、こんなの大したこと無ェだろ、放っておいて左側もやろう。

とまあこんな感じで最初はテキトーにやっていたんだけど、一度始めてしまうとどうにも止まらない。結局ワイパーのモーターを外したり、エアクリーナー周り、冷却水のタンク、ウォッシャーのタンク、あれやこれやと、外せるものはガンガン外しているうちに、何かを外すとそこには錆があるといういつもの法則に従って茶色いポツポツが顔を出し始める。こうなるとますます止まらない。呑気に掃除なんかやっている場合ではない。まずは錆だ。とにもかくにも錆だ。いつの間にか手に持っているものが雑巾からサンドスポンジに入れ替わっている。それでもって錆っぽく思える部分をゴシゴシ擦る。あーあー、こんなんじゃ白い部分が無くなっちまうよ。ほんの一瞬、見ないことにしておけば良かったと後悔したりするけど、やっぱり手は止まらず、今度はワイヤーブラシに持ち替えて狭い部分を擦っていたりする。最早ラストバスターを取り付けるという目的は完全に何処かへ行ってしまっていた。錆だ、錆取りだ、とにかく錆を取るんだッ! こうして当初の目的を忘れて暫く錆取りに没頭していた俺は、一休みの一服中に極めて当たり前の事実をようやく思いついた。

これ、塗らなきゃマズイじゃん。

貧乏人にとっての全塗装とは外ヅラだけであることは当然の事実であり、エンジンルームなんかは最初から予定に入っていないのだ。何てことだ、こんな所の塗装を剥いでしまったら自分で塗るしか無いではないか。クソッ、俺はただ掃除していただけなのに。それどころか、ラストバスターが付けたかっただけなのに、何で塗装なんかしなくちゃいけないんだ畜生。ブツクサ言いながらワイヤーブラシで擦りまくる。どうせ塗るんだったら、ちょこっとだろうが全体だろうが同じことだ。とにかくひたすら擦って、その上からPOR15をぶっかける。こんな所、どうせボンネットを開けなきゃ見えないんだから良いのだ、と開き直ってみたが、クルマ好きという人種は、他人のクルマを見る時は何故かシートに座るより先にボンネットを開けるもんだから始末が悪い。あんまり適当にやるわけにもいかん。あーメンドクセエ、なんて言いつつもいつの間にか俺はエンジンルームの右側に移っている。そして最初は放っておくつもりだった小さいポツポツ錆が今度はやけに気になる存在になっていた。とりあえずもう一度エンジンクリーナーをぶっかけて雑巾で拭く。あーあ、やっぱりどう見ても錆だよなあ。しかし既に辺りは暗い。もういいや、今日は止めよう。やり始めたらどうせまたハマるし。

1週間後、再度サンドスポンジを持って錆に立ち向かう。正直言ってセコイ錆に思えるので、こんなのすぐ終わる、と思ったら大間違い。この後数週間に及ぶ大惨事が、このセコイ錆から始まろうとはこの時点では知る筈が無い。ゴシゴシ擦っているうちに、表面の浮き錆だと思っていた錆がだんだん大きくなっていくことに気付く。ん、なんか様子がおかしいぞ。思わず擦る。また広がる。おい、こりゃ一体どういうことだ、何か変だぞ。擦れば擦るほど広がる。そして遂に穴が開いてしまったではないか。たかだかサンドスポンジごときで穴が開くとは情けない。しかも普通の人ならとっくに捨てているくらいボロボロのスポンジで、だ。あーあー何てこったい。そしてその穴を細いマイナスドライバーで突っついてみると、さらなる悲劇が待っていたのだ。

ぬぉっ、何だこれは、完全に腐って粉になってしまっているではないか! 突っついた先は錆びた鉄だとばっかり思っていたのに、鉄どころかこれでは砂鉄だ。穴から引っかきだしてみると、次から次へとボロボロ出てくる。嗚呼、ダメだこりゃ。この鉄板の裏側は完全に錆びている。それにしても、ここまで錆びているのに貫通しないのが逆に解せないので、しゃがみこんで裏から覗いてみると、どうやらこちらの鉄はピンピンしているようだ。どうにもワケが判らないが、1枚の鉄だとばっかり思っていたのに、ここは実は3枚重ねであって、その真ん中の鉄だけが錆びてしまったようだ。それにしても一体どういうわけで真ん中だけ錆びるんだ? ますますワケが判らん。ワケが判らないままに錆びを引っかきだしているうちに、どうにもこの表面の鉄板をひっぺがしたい衝動に駆られてくる。このまま放っておいても真ん中の錆びが外の2枚に延焼するだけなのだ。今ひっぺがそうが、そのうち腐ろうが、結果は同じじゃないか。考えなきゃいいのに、こういう余計なことを考えてしまい、しかもそれを実行に移してしまった俺が馬鹿だったのは言うまでもない。

ひっぺがそうとするのなら、ドロッピングレジスタを固定している邪魔なプレートを外さないことには何も始まらない。困ったことにこいつは溶接で止まっているので、外すというよりひっぺがす、と言った方が正しい。さあどうやって外そうか、なんて考えながらプレートを捻ってみると、何だこりゃ、もうグニャグニャじゃねえか。こんなに動くってことはいよいよこの表面の鉄板は死んでるな。半ばヤケクソでプレートを捻りまくっていると、簡単にペリッと鉄板が割れてプレートが取れてしまった。やいいすゞ、仮にもエンジンルームの鉄板だぞ、こんなんでいいのか?

これが外れれば、あとはダメな鉄板を毟り取るだけだ。ドライバーを突っ込んで、錆が出る部分の表面の鉄板は潔く捨てる。ドライバーでちょっとこじっただけで簡単に剥がれるところがなんとも情けない。こんなに簡単に鉄板が剥がれることはまるで予想をしていなかっただけに、これは嬉しい誤算ではあるけど、そもそも錆びてないのが一番嬉しいのだからやっぱり誤算なのだ。あんまりにも簡単に毟れてしまうので、穴がどんどん広がってしまう。おいおい、一体何処まで広がるんだ? すると、ある程度いったところで錆の粉が出なくなってきたので、そこで毟り取り作業は中止。これ以上やったらホントにボデーが無くなっちまうよ。

さて、ここまで毟り取ったはいいけど、この余った鉄板は一体どうすりゃいいんだ? う〜ん、こんな場所じゃあまさか鉄鋸で切るわけにもいかんなあ。しょうがないのでヤケクソで金切り鋏を試してみると、何だオイオイ、簡単に切れるじゃないか。あーあーもう、このエンジンルームはこんな情けない鉄で出来ていたのかと思うと何だかこっちが情けなってくるじゃないか。所詮こんなもんか、と思うと、今後の錆取りにも希望が出てくる。だって、最初からこんな情けない鉄なのだ。多少テキトーに処理したって大して問題無いだろ。強度も何もあったもんじゃない。従ってテキトーに金切り鋏で余分な鉄板を切って、それで表に出てきた部分をテキトーに錆取りして、テキトーにPOR15を塗ったくって終わりにしてしまった。まあ隙間という隙間にPOR15を流し込んだから大丈夫だろ。問題はこの後どうやって仕上げるか、だ。そして、既にこの時点で、俺の心の中ではどうやって後始末するかは決まっていた。でも、結局その手段はイマイチ失敗だったんだけど。


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