save the piazza! ---- diary

1999/11/* やはりコイツは柔らかくなければならない (1)

パーセルシェルフの修理に成功した俺は完全に調子に乗っていた。レザークラフトなんかやったこと無いのに、そこそこ満足の行くものが出来たのだ。他の部分でもやってみようと思うのは当然ではないか。となれば、次のターゲットは色を塗って誤魔化すつもりだったダッシュボードである。そのつもりで'88 XSから取ってきたグレーの後期型ダッシュボードは、既に半年以上部屋の隅で無駄なスペースを貪っている。実は、コイツを塗るつもりでXEに似合いそうな色のスプレーを随分前から手当たり次第買っていて、しかもそのいずれもがどうにも気に入らなくて思いっきり無駄金を使っていたのだが、ビニールレザーで覆ってしまえるのであれば、質感も色を塗るよりはマシな上、色問題も解決して一石二鳥だったりするのだ。うん、これはやってみる価値があるぞ。

パーセルシェルフを作ったときに余ったビニールレザーをグレーの後期型ダッシュボードに乗せてみて、実際にそんな細工が出来るのかどうか調べてみる。しかし、パーセルシェルフに比べたら明らかに難しい形をしていて、R部分が沢山あるダッシュボードに貼るのはちょっと難しそうな気がしないでもない。今回ばかりはいくらなんでもビニールレザーの弾力性に頼るのは無理そうだ。少なくとも、前面と側面は切り貼りしてくっつける必要がありそうだ。となると、どうやってくっつけるかが問題だ。革と革を繋ぐといえば糸での縫製だけど、俺にそんな技術があるわけがない。まさか今からお針子修業するわけにもいかんだろう。こうして悩んでいた時、たまたまそこにあったボロボロのMTシフトブーツが目に入った。

そうだ、裏から繋げばいいんじゃないか!!

そのシフトブーツは、縫製の糸は表からは全く見えず、全ての縫い目が裏側に来るように作られていたのだ。部屋で座椅子になっているXESの本革シートを毎日見ていただけに、見えるように縫わなきゃいけないと思い込んでいた俺が馬鹿だった。裏からやれば縫い目なんか見えないから、技術なんかなくたってどうにでもなるじゃないか。でも、やっぱり縫うのは大変だ。俺は基本的に家事は何でも出来るし好きなんだけど、裁縫だけは苦手なのだ。こればかりは出来れば避けたい。駄目なものは駄目なのだ。うーむ、どうするべきか。とりあえず頑丈にくっつけば何でも良いのだ。接着剤なんかインチキ臭くて駄目だ。何か良いものはないのか? 考えているうちに思わず煙草を探す俺。そうして煙草を手に取ろうとすると、それは見事にタッカーの側に置いてあったのである。

そうだ、俺にはパーセルシェルフで培ったホチキス技術があるではないか!!

これだっ! これなら簡単に、しかも確実に固定できるではないか。今まで暗かった視界が一気に開けたような気分だ。でも、ホチキスの針はまっすぐだから、これで微妙な曲線が表現できるのか? 試しに余ったビニールレザーのカスを2枚突き合わせて、適当にRを描くようにホチキスで留めてみる。場所によってはどうしても角張ってしまうが、強度的には殆ど問題無いようだ。かなり強めに引っ張ってみても特に壊れそうな気配はない。ホチキス針は鉄製なだけに、心配なのは錆だけだけど、ステンのホチキス針なんて聞いたことないからこれは仕方あるまい。まあこんな所錆びるわけがないだろ。しかも錆びたって見えやしない。うん、まあイケるだろ。早速余ったビニールレザーのうち、一番大きめの部分をハンズの袋から取りだす。その袋に入っていた、天井の修理用に使えないかと思って買ってあった1m x 1mの厚さ3mmのスポンジが、俺にもう一つスゴイ案を思いつかせた。

アレとコレの間にスポンジを挟めば、アレが柔らかくなるじゃないか!!

アレ=ダッシュボードで、コレ=ビニールレザーである。この2つをただ両面テープでくっつけるのはあんまりにも芸が無い。間にスポンジを挟んだら、130マニヤ垂涎の柔らかいダッシュボードが出来るじゃないか! 初期型の非形状記憶式グニャグニャ変形型ダッシュボードを捨てて後期型に走ってしまって、多少後ろめたい思いがあった俺にとって、この大発見は偶然の産物とは言え我ながらスゴイんですよハイ。そして俺は間髪入れずにやおら袋からスポンジを取り出してダッシュボードにあてて、その上からビニールレザーを被せて柔らかさを楽しむ。ちょっとグニャグニャ過ぎて本来の柔らかさとは違うが、硬いのに比べればその心地よさは比べ物にならない。もう作らずにはいられない。いきなりダッシュボードから始めてしまうと大変だし、うまくいくかどうかも判らないので、まずはグローブボックスから始めることにする。

既にグローブボックスは完全に分解してあり、やたらめったら買ってきたスプレーの色調試験用の試験片として活躍していた。この時はチョコレートに塗られていたが、こんな色の内装のクルマには乗る気にならんし、何回も塗っているうちにシワシワ模様が埋まってきてしまってツルツルになってきていたので、ビニールレザー作戦が上手くいけばこれは好都合だ。早速買ってあったスポンジを両面テープで貼り付ける。ここまでは何ということは無いが、よくよく考えてみると、グローブボックスには当然ロックが付いているわけで、ビニールレザーでこれをどう処理するかという大問題が降りかかってきた。ロックとは言っても、グローブボックスの外皮から見たら単なる穴にすぎないんだけど、その穴が深すぎるから困りモノなのだ。うーん、こればっかりはいくらビニールレザーを引っ張ってもこの形状まで持っていくのは無理だ。適当に誤魔化すしかあるまい。外側からサイズの合うプラスチックのリングでも嵌めるか? それも変だよなあ。しょうがない、とりあえず穴だけ開けておけばいいや。

続いてビニールレザーをパーセルシェルフと同じ要領で現物合わせで切り取る。この外皮は実はグローブボックスとネジ止めなので、余ったビニールレザーはその間に挟まることになる。だから余っても見えやしないし、どうせそれで固定されるだろうから、あんまり神経質になる必要は無い。足りなくなってビニールレザーを丸ごと損するよりは余る方がまだマシだ。そんな具合なので作業も極めて適当だ。さっき貼ったスポンジの上に両面テープを貼る。せいぜい四辺に貼るくらいで十分だ。勢い余って沢山貼りすぎると、ビニールレザーの上から触ってもゴワゴワしてしまって、折角のスポンジの質感が失われてしまう。余った部分を留めるために、裏側と側面にも貼っておく。そして両面テープの紙を剥がして貼る。はい完了。簡単、簡単。

これで終わりなら本当に簡単なんだけど、最大の難関、ロックの穴が残っている。正直言ってこれは参る。どうにも上手い手段が思いつかない。とにかく穴を開けないことには使い物にならないのは判りきっているので、まずは穴の部分にカッターで十字型に切り込みを入れてみる。続いてその結果余る部分を穴方向に押し込んでみる。うーん、やっぱり変だよなあ。しかし、これを切ってしまうともっと酷い状態になるのは切らなくても判る。じゃあこれを固定するしかないじゃないか。両面テープを細く切って穴の裏側からチマチマと貼る。そして表側から浮いているビニールレザーを押し付ける。うーん、何もしないよりはマシだけど、良くはない。大体、十字に切っただけでは以前のチョコレート色の塗料が見えてしまって締まりが悪い。仕方がないので余っているビニールレザーを細い紐状にして穴に沿って貼り付けて、その上からまた外皮に貼ったビニールレザーを押し付ける。さっきよりはまだ良いが、それでも納得はいかない。何れにしても最終的には何らかの他のグッズに頼らざるを得ないようだ。

穴はもうどうにもならん。でもここまで来ると組み立てずにはいられないぞ、と思うと既に手は勝手にドライバーを握っている。そのへんに転がっていたグローブボックスの本体と、ビニールレザーを貼ったガワをネジで留める。この時に余りのビニールレザーをきちんと挟んだり、角の重ねている部分を丁度良いシワ具合になるように上手いことネジを締めなければならない。それができれば完了だ。うむ、良いではないか、穴以外は。角にシワが出来るのは一体成形ではない証なので気にならないことにする。そして固定されたビニールレザーの上から指でつついて感触を楽しむ。ふっふっふっ、これで遂に柔らかいダッシュボードになれるぞ。しかも革だ(ビニールだけど)。これで遂に俺のXEはXESさえ越えたぞ、XESだってダッシュボードまでは革じゃないからな(ビニールだけど)。下らないことを考えつつ、ニヤニヤしながらひたすらビニールレザーを突っつく俺。この時は数日後にホチキス打ち繰り返しまくりの刑に処されることなど考えてもいなかった。

Next diary

save the piazza!