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Diary


(2000/07)


[ New office, New home, New life ] 2000/07/31(Mon)
目覚ましに叩き起こされて7時半に起きる。日本だと何時だとか考えることすらメンドクサイ。とりあえず顔を洗ったり、歯を磨いたり、備え付けの珈琲メーカーで珈琲を作ったり、着替えたりしているうちに時間は過ぎる。ところで、俺は今日は一体どうすりゃいいんですかね? 誰かがここに迎えに来ることになっているんだけど、誰が何時に来るかすら判ってないのだ。そんなの空港に着いてから決めればいいと思っていたのに、空港に担当者が来なかったんだからどうしようもない。8時半になっても何の連絡もないので、しょうがないのでNさんに電話してみる。エライ人に聞いてみるからちょっと待ってて、というので、ジョン&パンチとおぼしきテレビを見ながら待つ。すると電話が鳴ったので、ヘロ〜、と言ってみると、向こうからは妙なアクセントでオハヨウゴザイマスという声が聞こえた。俺の受け入れ担当者たるJimである。フロントまで来ているようなので、すぐ行きますよ、ということで電話を切る。

荷物をまとめてフロントまで行くと、Jimはソファーに座っていた。典型的な痩せ型の中年米国人といった感じで、もっと若いと思っていたので少々驚く。チェックアウトを済ませ、朝飯はまだか? と言うので、まだだ、と言うと、じゃあ食いに行こう、なんて言いながらホテルの別室に向かう。何処に行くんだ、と思ったらそこは朝食用のホールみたいなところで、パンだの何だのが沢山並んでいるではないか。米国のホテルではこんなの当たり前だと言うが、シアトルに行ったときはこんなの見なかったぞ。パンを食いながら世間話をする。何とJimは日本には30回以上行っているらしい。そりゃタイヘンだ、という一言が英語で言えなくて困る。今日はレンタカーを借りて、会社に5分ほど顔を出して、昼休みの後にアパートに行って、それで終わりだ、という予定のようだ。時差ボケでボロボロなので有難い。

早速レンタカーを借りに行く。店はホテルから3分くらいの場所。契約は1ヶ月単位のようで、俺は同じサインを6回もする羽目になる。今洗車しているから待ってくれ、と言われたので暫く座って待つ。そして出てきたのはFordのFocusという車である。日本で言うカローラみたいなもんだ。エアバッグが付いている割にはハンドパワーウィンドウだったりするのが米国らしい。そんなことより、禁煙車であることに思いっ切りガッカリする。そしてJimのBMWの後ろに続いて会社に向かう。久々の左ハンドル・右側通行にビクビクしながら走る。しかしまあ、接地感の無い車だなあ。I-275を降り、田舎道を暫く走った所に会社はあった。

会社に入り、自分の席に案内される。こちらの会社らしく、完全に他人とは区切られたプライベートな空間に、PCがポツンと置かれている。19インチのモニタも小さく見えてしまう。そして、俺と一緒に仕事をするRavi(インド人)を紹介される。早速何を言っているのか判らなくてSorry?を連発してしまう。モノの本によるとSorry?は英国英語らしいが、通じないことは無いだろう。今日は仕事は5分、の筈だったのだが、Jimは打ち合わせに行ってしまったので何をして待ってりゃいいのか判らない。仕方なくRaviと一緒に自己紹介をするために辺りをウロウロする。クソ眠いところに英語で話されても何を言っているんだか判らないが、Raviが適当にフォローしてくれるので助かる。その後席に戻り、とりあえず開発環境を整備するのが仕事だから、ということでドキュメントを貰い、ついでにPCの設定をする。そしてRaviは去り、俺はドキュメントを読み、眠くなり、ホントに寝てしまう。

昼休みになり、Raviがランチの誘いに来たが、食ったばっかりだし、眠から寝ていると言って断る。そして気付いたら1時半。ようやくJimが現れ、アパートに向かうことになる。I-275を北上し、50番の出口で降りて北西に向かう。大体30分近く走っただろうか。右側に曲がった所が、今後半年間の住居たるSteeplechaseアパートだ。しかし何だこりゃ、アパートって言うより公園みたいだ。そこら中に噴水とか芝生があるし。似たような建物が何軒も建っているので、団地のようでもある。かなり奥の方に行ったところが俺の部屋のようだ。車を適当に停めて部屋に入ってみると、まだオバチャンが掃除していた。あと30分ほどで終わると言うので、近くのスーパーに行って生活用品を買おう、ということになる。

5分ほど行くとスーパーがあった。昨日Nさんに連れていってもらったKrogerだ。馬鹿みたいにデカイ買い物カゴを持って店内をウロウロする。こっちでは2週間に1回くらい大量に買い込むので、このくらいデカイ買い物カゴでないと成り立たないらしい。Jimがアレがどうの、コレはどうのと色々と説明してくれる。右も左も判らない俺はそれに従ってモノをカゴに突っ込む。それにしてもパンが一袋に30枚くらい入っているのには参る。確かに1枚の大きさは日本の2/3くらいなんだけど。ティッシュだの髭剃りだの歯ブラシだのシャンプーだのといった生活用品もカゴに突っ込む。コーラが12本で3ドルだったりするので、これも思わず買う。レジに向かうと、Jimは手際よくモノをベルトコンベアに並べていく。こっちでは客が自分で置くらしい。カードが使えるかどうか試したほうがいいぞ、と言うので使ってみる。問題無く使えた。日本語でサインを書くと長ったらしくてうざったい。

アパートに戻ると、丁度掃除が終わった所であった。しかし何だこりゃ、これが一人で住むような場所ですかね? 2LDKなんて、日本じゃ夫婦と子供で住んでるような場所だぞ。一通り見て回ったところで、Jimは会社に戻る。俺は買って来たモノや、持ってきた荷物を整理したりする。PowerBookを出して、試しに繋いでみる。昨日繋がったアクセスポイントは何故か蹴られる。おかしいぞ、電話は既に来ている筈なのに。色々とアクセスポイントを変えているうちに、ようやく繋がる場所を発見。これで一安心だ。

まだ時間は6時頃なんだが、とにかく眠いので風呂に入ろうとすると、あろうことかドライヤーが無いことに気付く。珈琲メーカーや食器まで用意されていたりするのにコレが無いのはちょっと解せない。しょうがないので近くのスーパーまで買いに行く。今度はKrogerよりもっと近くにあるMEIJER(マイヤーと読むらしい)という店に行ってみる。こっちの方がKrogerの倍くらいデカイ。ウロウロしているうちにドライヤーを発見。どうせ半年しか使わないので、10ドルの一番安いやつにする。ついでなのでウロウロしていると、コーラが2ドル49セントだったりしたのでちょっとガッカリ。ついでに歯ブラシとかの品揃えも多い。要するに大抵のものはこっちで買ったほうが良いということだ。レジに行って、カードの使い方を聞く。どうせ戸惑うので最初から聞いたほうが良い。どうやらここではサインをタッチパネルから入力するようだ。しかしこのタッチパネルの反応が芳しくないので、字がボロボロだ。日本語だから余計に酷い。まあいい、どうせ米国人には何書いても判りやしない。

時間はまだ8時だが、外はまだまだ明るい。しかし猛烈に眠い。今からレストランに行く気もしないし、それ以前に何処にあるのか判らないので、さっき何となく買ってきたフライドチキンを食ってお茶を濁すことにする。その後風呂に入ると、眠気はいよいよ本格化してくる。まだ9時ちょっと過ぎだってのに、もうダメだ。目覚ましを6時半にセットして、さっさと寝ることにする。ベッドは案の定ダブルベッドだった。



[ Cincinnati ! ] 2000/07/30(Sun)
日本に居られる最後の日。別に死ぬまでアメリカに居るわけじゃないから最後っていうわけじゃないけど、やっぱり3ヶ月間行きっぱなしっていうのは海外渡航経験1回、しかも10日間っていう身にはちょっとばかし長いし、ほとんど引っ越し気分なので、ホントにこの日が最後のような気がしてしまう。

米国へのフライトは、17:35分発ポートランド行きのデルタ航空便。ポートランドには現地時間の10:20に着いて、その後12:45発のシンシナティ行きに乗り換える。このポートランドってのがどうもクセモノのようで、入国審査が異常なまでに厳しいらしい。「90日以内の滞在であれば、ビザ無しで滞在できます」の特例を利用しようとしている俺にはこれが凄いプレッシャーになっている。とりあえず適当にウソついて、それがバレて、結局日本に突っ返されても、それはビザを取ろうとしない会社が悪いんだ、と開き直るしかない。

俺は元々飛行機が苦手で、前にシアトルに行ったときも全然寝られなくて苦労したので、今回はわざわざ朝6時に起きる。多分最後になるであろうメールチェックをしたりして、そのまま毎月末恒例のピアッツァのミーティングに行く。ホントは前回で最後の筈だったんだけど、これはフライトが遅い時間のものになったおかげだ。都筑PAに着いても、時間が早すぎて全然人がいない。そりゃそうだ、俺だっていつもならこんな時間はまだ寝ている。暫くするとポツポツとピアッツァが現れる。ちょっとだけ話をして、大分ピアッツァが増えてきたころになって家に向かう。こういう時に限って大渋滞。帰りついでに、スーパーに寄って垢すりタオルを買う。こんなの向こうには無いだろ。

家に戻って、ついさっきまで乗っていたピアッツァにカバーをかける。今日は異常に暑いこともあって、たかがこれだけなのに大汗をかいてしまって、シャワーを浴びる羽目になる。そして気付いてみると、家を出る時間まであと40分くらいしか無い。既に準備は終わっているから別に焦る必要は無いのに、何故かその40分がすごく短く感じられる。一服しながら、出しっぱなしだったPowerBookを鞄に入れる。慌てていたので、危なくアダプターを入れ忘れそうになる。アブねえアブねえ。

そろそろ時間だ。何となく実家に電話する。普段は絶対にこんなことしないのに。戸締まりを確認して、ガスの元栓を閉め、ブレーカーを落とす。冷蔵庫も、オーディオのタイマーも全部消えて、ここに引っ越してきた時以来の静寂が訪れる。あ〜あ、ホントに行くんだね。

荷物を部屋から出す。今回持っていくのは、デカいスーツケースと、PowerBook用のアタッシュケースみたいなやつと、小さいショルダー1つ。ダイクマで16800円で買ったスーツケースは、予想に反してスカスカだ。2週間とかだったら色々考えたかもしれないけど、半年なんて話になると逆に開き直ってしまって、そんなの行ってから買えばいいじゃん、ってことになってしまうから。それでも、デカイ分だけ重い。階段を2往復して荷物を1階に降ろして靴を履く。部屋の鍵は下駄箱(うちのマンションは下駄箱が1階にあるというヘンな所なのだ)に入れておこうと思ったのに、いつもの癖で持ってきてしまった。辻堂駅までガラガラとスーツケースを引っ張っていく。たかがこれだけでも凄い汗が出る。タオルを忘れたことに気付いても後の祭りだ。今更どうしようもない。駅に着いて、重い荷物を持って階段を上がる。この後は何処もエスカレーターがあるから、スーツケースを持ち上げて移動するのはこれが最後だろう。横浜までの切符を買って、ヨタヨタと自動改札を通り抜け、エスカレーターでホームに降りる。

電車が来た。幸いなことに空いている。扉が開き、俺は乗客の列の最後に回り、入り口のそばの空間にスーツケースを置く。席は幾つか空いているけど、この状態では座るに座れない。気付いたらもう戸塚、そしてここで一旦降りて横須賀線に乗り換える。こうすると、横浜で成田エクスプレスに乗り換える時に、同じホームなので楽で良いのだ。

横浜に着く。まだ13:25じゃないか、俺が乗るのは14:00の成田エクスプレスだって言うのに。いくら何でも早すぎた。13:30発の成田エクスプレスを見送りながら、ホームの端で一服する。どうせこの先はろくに煙草が吸えないのだから、今のうちにガンガン吸いだめしておくに限る。そんなことをしているうちに、会社の連中が見送りに来てくれる。俺が大好きなペヤングソース焼きそばが5個入った袋を持ってきてくれたが、乾燥肉が入ったカップラーメン類は没収されるという話を聞いたことがあるので丁重に断る。連中は調子に乗って写真を撮ったりしているが、こちらはそれどころではない。ドキドキしている間に電車が来てしまう。あ〜あ、これでホントにお別れだ。半ばヤケクソな勢いでスーツケースを持ち上げて電車に乗込む。席に座って一息ついていると、電車がなかなか出ないのをいいことに連中は電車の中にまで入ってきて写真を撮っている。それでもいつかは時間が来る。ついに扉は閉まり、横浜駅を出る。

向かいに座っているのは、お爺さんと20歳前後のネエチャン。多分ホームステイの見送りか何かだろう。俺も「仕事」というプレッシャーが無い時に一度海外に長期滞在してみたかったな。同じ場所でも、多分全然違った感じに見えるに違いない。仮に英語が伝わらなくても、自分が困るだけでいいんだから。仕事相手や、会社にまで迷惑をかける、なんてことは出来れば考えたくない。その二人がガイドブックを見ている間に、俺は英会話の本を広げながら延々とCDを聞いている。東京でドッと人が増えていきなり満席になる。暫くそのままCDを聞いていたが、さすがに朝が早かったせいか何時の間にか寝てしまっていて、気付いたら成田の第二ターミナルまであと10分くらいのところだった。

駅を出て、そのまま空港に入る。第二ターミナルは初めてなので勝手が判らない。とりあえずチェックインしようにも、デルタ航空なんてのは看板を見ても何処にも書いていない。単純に外国航空会社で纏められてしまうというのもいかがなものか。仕方なくダラダラ歩いているうちに見つかる。どうやらチェックインの前に荷物チェックがあるみたいなので、スーツケースを通して、その後チェックインをする。カウンターのネエチャンは、混んでいるので窓側しかないけど良いですか、なんて言うけど、じゃあやだ、帰るぞ、なんて言えるわけが無いのでハイと言う以外に無い。荷物はポートランドで一度受け取って云々と言っているけど、適当に聞き流す。ここできちんと確認しなかったがために後で面倒なことになる。次は出国管理局だけど、ここがどういうわけか恐ろしく混んでいて、とんでもない大渋滞を引き起こしている。夏休みだって言うのにゲートが2つしか開いていないんだから当たり前だ。一服して待っている間も解消する見込みがないので仕方なく並ぶ。手荷物チェックを難なく通り過ぎて、出国カードに記入する。管理官のところに並んでいると、前のネエチャンは出国カードも持たずに並んでいたので突っ返される。俺も前に行ったときはこんな感じで右も左も判らなかったんだよな。そしてこれを通り過ぎるともう戻れない世界だ。免税ショップとかがあるけど、特に何をするつもりもないのでさっさと出発ゲートのところに行く。看板に従って歩いていると、どうやらシャトルに乗っていかなければならないようだ。そのシャトルは、たかだか100mくらいの距離を進んですぐに終点。こんなのだったら通路作った方が話が早いんじゃないのか? そして俺が乗るD96とかいうゲートを探す。どうやら一番端の方にあるらしい。ここまで来ると、待合室のベンチもガラガラだ。喫煙マークがあるところに座って、多分日本最後となるであろう一服をする。ん? それともここは法律上既に日本ではないのか? 詳しいことは良く判らないが、少なくともこれから先はポートランドまで煙草が吸えないことは間違いない。やることが無いので外を見たりしているうちに搭乗時間が来る。しょうがねえ、乗ってやるかい。

MD-11ってのは初めて乗る飛行機だけど、そもそも飛行機嫌いの俺にはそんなのどうでも良い。とりあえず落ちなくて、五月蝿くなければ何でもいいや。指定された52Jの席はかなり後ろの方だったが、窓側で、しかも隣が知らない人だから、飛行中にトイレに行くのは半ば諦めたほうが良さそうだ。鞄を足の下に置いて腰を下ろすと、早速鞄を前席の下に入れろと注意される。ハイハイ、判りましたよ。こんなことだったら、頭上の棚に入れておけば良かった。かなり時間が経っても隣の席は空いたままだったが、外を見てボーッとしているうちに気付いたら若いネエチャンが座っていた。ありゃ、全然気付かなかったぞ。そうこうするうちに何時の間にか離陸の時間となっていた。今回は半ば諦めの気持ちみたいなものがあるからなのか、前回みたいな緊張感はまるで存在しない。飛行機はあっという間に海の上に出る。あ〜あ、ホントに離陸しちまったよ。まあいいや、さっさと寝るか。というわけで寝ていると、何やらウルサイので目が覚める。フライト・アテンダントが何か言っている。こっちは寝ていたもんだから、何を言っているんだか判らないので聞き直すと、いかにも「これだから英語が判らん奴は困る」みたいな態度を示しながらドリンク云々と言っているので、逆に何があるのかと聞き返してやる。色々言わせておいて結局頼むのはオレンジジュースだ。マッタクもう、ジュースなんかどうでもいいから寝かせておいてくれればいいのに。仕方がないのでイヤホンを取り出して機内放送を聞く。そのうちの1つが、どういうわけかコンピュータ系の話題を延々話しているので、とりあえずそれを聞く。暫くするとディナーの時間が来たようで、メニューが配られる。わざわざメニューが出てくるとは、ノースウエストとは随分違うなあ、なんて思っていたら、結局「シーフード」という名のついた日本食しか残っていなかったようで、頼みもしないのにそれを持ってくる。全然メニューの意味が無いじゃないか。俺はバーベキュービーフとかいう奴が食いたかったのに。悔しいので、今度はジュースではなくビールを頼む。それでもディナーがそこそこ美味かったので満足する。そのうち映画が始まるが、面白くも何ともない映画なので俺は相変わらずラジオを聞いて、たまに知っている単語が出てきただけで満足する。こんなことでは仕事にならんぞ、なんて考えているうちに寝てしまう。そして暫くするとまた目が覚める。

そんなことを繰り返しているうちに朝飯の時間が来たようだ。サンドイッチ・オア・スシ、なんて言っているので、日本食の食い納めだとばかりにスシを頼むと、コンビニのおにぎりと稲荷寿司が出てきた。これが単なる旅行だったらムッとしていたかもしれないが、まあ今回は事情が事情なだけに全然構わん。あと3ヶ月は食えないと思っていたコンビニおにぎりにこんな所で出会えるとは。隣のネエチャンは、何も言っていないのに勝手にスシを置いていかれて困惑している。夫婦とでも思われたのだろうか。食い終わったところで、例の緑の紙と、関税申告書に記入する。今回はどういうわけか会社が用意してくれて、しかも殆ど記入済みだったので楽勝だ。書き終わったところでまた寝る。もうとにかく寝てばっかりなんだが、何しろ寒いし、足元が狭くて寝た気がしない。そして遂にポートランドに到着する。着いちまったか、なんてのより、やっと立って足を伸ばせる嬉しさの方がよっぽど勝っていたりする。さっさと荷物をまとめて降りていくと、そこには恐怖の入国審査が待っている。

席が後ろの方だったせいもあってか、既にかなりの行列になっている。仕方ないので並んで待っていても、これが全然進んでくれない。前のロスの時は、みんな二言三言聞かれてハイOK、みたいな感じだったのに、一体何を聞いてこんなに時間がかかっているのだろうか。たまにさっさと終わる奴が居たかと思うと、それは殆どが関税申告書を書かずに突っ返された奴だ。俺も前回同じことをやったのでまるで笑えない。とにかく待たされるのでイライラが爆発しそうになったところで、別のところでも審査を行うとのお達しがあったのでそちらに移動する。管理官はまだ20代前半の若造だ(のように思える)。こんな奴にエラソーな態度をされると腹立たしいことこの上ない。前の二人がことごとく関税申告書未記入で突っ返されて、案外アッサリと俺の番が来る。目的は? と聞くので、ソフトウェアの研修だ、と言うと、何のための研修だ、だの、一体お前の仕事は何なんだ、だの、その研修で勉強したことを何に使うんだ、だのと、そっちこそお前の仕事は一体何なんだ、と聞き返したくなるようなことを聞いてくる。既に腹が立ちまくっている俺は目茶苦茶ぶっきらぼうに答えていると、単に判っていないと思われたのか、この審査官はたまたまそばにいた通訳を呼んできた。通訳が居ようが居なかろうが、結局俺はそのまんま英語で、しかも単語だけ並べて適当に答えてしまっているので何も変わらない。お前の会社と、その研修を受ける会社の関係は何だ、と言うので、distributer、と言い返すと、それでようやく納得したのかどうかは判らないが、とにかく判を押し始めた。一番心配していた渡航期間については何も聞かれなかったのが逆に拍子抜けだ。殆ど仕事の話だけで終わってしまったじゃないか。こんなので時間ばっかり稼ぐんじゃねえよ馬鹿野郎、俺はとにかく煙草が吸いたいのだ。

入国審査を抜けると、そこはBaggage Claimになっているのだが、いつものように荷物はグルグル回っていたりはせず、幾つか残って停まったままになっている。まさに時間ばっかりかかっていた証だ。荷物を持って、関税申告の紙を渡すと、何故かここで折角受け取った荷物をもう一度提出させられる。だったら最初から渡さなきゃいいのに、一体何がしたいんだかさっぱり判らない。とにかくこれで無事に米国に入国したぞ。さて、荷物を受け取って煙草でも吸うか、というわけで、Baggage Claimの方に向かって歩く。かなりの距離を歩いてBaggage Claimの所に着いたが、俺が乗ったDelta 52便の表示が何処にも無い。まさか入国審査に時間がかかっている間に終わったわけでもあるまいし、俺の荷物を一体何処にやったって言うんだ? まあいいや、一服して待とう。

しかし、一服どころか三服しても荷物は現れない。仕方ないのでウロウロしていたら、空港職員とおぼしきニイチャンに話しかけられる。日本から来たのか、とか言うので、そうだと言うと、日本からの荷物は9番だ、と言うではないか。何だか判らないが、9番のベルトコンベアで待ってみる。しかし、相変わらず出てきやしない。おかしいなあ、と思ってチェックインした時に貰ったタグを見てみると、そこには何とCVG(シンシナティ・ノースケンタッキー国際空港のこと)と書いてあるではないか。ありゃ、何だよ、荷物だけは勝手に行っちまうのかい。念の為さっきのニイチャンに聞いてみると、やはりそうらしい。まあいい、どうせ待ち時間はやることが無くてヒマだったのだ。チェックインも日本でしておいたし。早速シンシナティ行きのゲートを確認して、D14というゲートに向かう。案の定一番奥だ。何でこう毎度一番奥になるかね。

店に入ったりして暫く待っていると、何時の間にか搭乗が始まっている。何番から何番までの人、なんて言っているけど、そもそも何番から言い始めたのか判らないのでどうしようもない。しょうがないので適当に入る。すると、俺の席である30Aというのは、何とエコノミーの最前列、つまり貧乏人に唯一与えられた特等席ではないか。ここだけは足が思いきり伸ばせるのだ。さすがに10時間以上前にチェックインしただけのことはある。座って早々ウトウトしていると、気付いたら日本語でアナウンスが行われている。オイオイ、ポートランド〜シンシナティ便にそんなに日本人なんか乗ってるのか? そんなのを聞いているうちに飛行機は動きだす。そして離陸。俺はあっという間に就寝。折角の特等席の恩恵はあったのか無かったのかよく判らん。

途中、何度かドリンクやディナーで起こされながらも、それ以外は殆ど寝ている間に気付いたらシンシナティであった。そういや離陸直後のMt. Saint Helensはキレイだったなあ。それくらいしか覚えていない。既に時間は8時近いのに、外はまだまだ明るいのが何とも不思議な感じだ。そうか、こっちは今はサマータイムなんだよな。まあいい、そんなことより問題はこれからだ。一体誰が迎えに来るのかすら判っていないのだ。とりあえず先方は「Sota-san」と書いた紙切れを持って待っているらしいが、何処で待っているのかすら判らん。まあいい、俺はやることをやるまでだ。まずは荷物を確保することである。到着したゲートからターミナルまでの長い距離をズンズン歩く。エスカレーターを登った所には、明らかに誰かを待っていると思われる人が何人か居るが、少なくともSota-sanと書いた紙を持った人は居ない。そしてその場所は丁度ベルトコンベアがある場所だ。今度こそ俺が乗った便の表示があるので、そこで待っているときちんと荷物が現れた。うむ、よくやったぞデルタ航空。

さて、荷物も確保したし、一服でもするか、と思っていたところで、突然日本人から話しかけられる。俺が行く会社の日本法人から派遣されているNさんだ。てっきりアメリカ人が待っているものだとばっかり思っていたので、何て話せばいいのか悩んでいたのに拍子抜けもいいところだが、日本語で済むならそれにこしたことはない。そのままNさんの車に乗せてもらって、今日の宿泊先のHoliday Innに向かう。空港からはI-275に乗って大体30分くらいといったところか。ホテルのフロントでようやく英語を使う。案の定同じことを2回言わせないと理解出来ない。俺の部屋は106号室のようだ。とりあえず荷物を置くだけ置いて、Nさんと一緒に晩飯でも食おうということになる。

そのへんのファミレスでも行きますか、ということになり、ちょっと移動したところで試しにスーパーに入ってみることにする。このKrogerというスーパーは、このあたりでは呆れるほど色んな所にあるらしい。しかも24時間営業というのがエライ。久々に訪れた米国のスーパーは、相変わらず何を見てもデカくて安いので思わず笑ってしまう。酒や煙草もスーパーで買えるらしいが、煙草はわざわざ店員に頼んでちょっと離れた場所にあるケースを開けてもらわなければならないのがメンドクサイ。とりあえず着いたばっかりなので何も買うものは無かったので、誰も居ないレジに行ってNさんからカードの使い方についての指導を受ける。ふむふむ、店員に渡すのではなくて、こっちが勝手にカードを機械に通すのだな。スーパーを出て、ついでにガソリンスタンドにも寄ってもらって、セルフのスタンドでの入れ方を御教授頂く。カードを通して、入れるグレードのボタンを押して、勝手に入れてお終い。一度も店員と話をする機会もないとは。ボンネットを開けて云々とウルサイ日本のスタンドも少しは見習うべきだろう。そしてファミレスに行って色々と話をしながら晩飯を食う。単なるサンドイッチなのに妙にデカイ。世話になりっぱなしだというのに、奢ってもらってしまうとは何とも申し訳ないところである。ホテルに着いて、試しにAOLに繋いでみる。番号の先頭に、外線用の"9"を着け忘れたりして少々戸惑ったが、何とか繋がった。おっと、PowerBookのタイムゾーンも変更しなくちゃいかんな。ところでシンシナティのタイムゾーンって何処なんだ? まあいいや、デトロイトにでもしておこう。どうせ日本からすりゃ目茶苦茶ズレているんだから、1時間くらいズレていても大したこと無いだろう。それにしても、日本から普通に日本語でメールが受け取れるのは何とも不思議な気分。読み終わったところで猛烈に眠気を感じたので、さっさと風呂に入って寝ることにする。こうしてあまり米国らしくなかった1日目は終わる。ところで、明日は俺は一体どうすりゃいいんだ?

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